その三、炎天下
クラブに入っていた時のこと。
7月の例会は夏磯を攻めよう!ということで催された。
梅雨明けになるであろう7月中旬の日曜日に場所は日本海舞鶴の磯ということに決まり、地元でも有名な磯への釣行となった。
早朝5時半出船。
もう朝はすっかり明けきって港の後ろにある山々では蝉が鳴き始め、天気は雲一つ無い快晴。
蒸し暑さが早々と体を取り巻き、暑さとの我慢比べになるであろうと予想できる。
熱中症に備えて500mlペットのジュース、お茶3本、&コンビニアイス1袋をクーラーに納めて準備は万端。
ヤブ蚊が猛烈なアタックを仕掛けてくるという情報も得ていたので防虫スプレーも用意。
ここ最近の釣果は、ハマチ、マダイなどと冬磯とは違う豪華さで、暑さなんて吹っ飛ばしてくれるだろうと期待に胸を弾ませて船に乗り込んだ。
磯に上がってみるとベタ凪。
撒き餌をするまでもなく船が到着した瞬間からフグ、オセン、スズメダイ、チョウチョウウオが群れをなして私たちの到着を心待ちにして磯を取り巻いていた。
しばらくはこのエサ取り達との駆け引きの開始。
1,磯際に撒き餌を集中させて沖目に仕掛けを投入。
2,超遠投してから仕掛けを沈ませた後に目的のポイントに仕掛けを誘導してみる。
3,オモリを重くしてエサ取り層の突破を試みる。
4,撒き餌を撒くのをしばらくやめてエサ取り達の姿が見えなくなった時を見計らって仕掛けを投入。
5,刺しエサをボイル→砂糖漬けエビ→湖産エビなどにチェンジしてみる。
約3時間少々の攻防だったが、どんな攻め方をしてもものの30秒としないうちにエサはかすめ取られてしまう。
もうすっかりあきらめが付いた。_| ̄|○
釣り座が風裏なのかほぼ無風状態。
太陽は容赦なく頭上で熱波を送り続けている。
時間は午前10時。
汗は流れるが暑さですぐに乾いてしまうので蚊はそんなに寄ってこない。
持ってきた飲料は既にペット2本目を空にしてしまった。
それにしても暑い。
南紀などの夏磯は何度も通っていて慣れているはずだが、ここ日本海はちょっと勝手が違うようだ。
とにかく、風が無い・・・・・
午前11時にお昼として食べた弁当の塩ジャケがよりいっそうのどの渇きに加速を加えたようだ。
最後の3本目のペットボトルも空になって、まだ乾きが癒えない。
午後12時、コンビニアイスの溶けた水を飲む。
中の氷は殆ど溶けてしまって氷はほぼ無い。
これを飲み干してしまったらもう後がない。
午後1時、おそらく暑さのピークの時間帯。
コンビニアイスの袋は既に空っぽ。
暑さでめまいがしてきた。
すっかり熱中症の症状が出始めていて、気分が悪かったがライフジャケットを脱ぐわけにはいかない。
早く迎えの船が来ないかな~と考えるが磯上がり予定の2時にならないと来るはずがない。
何度も何度も時計を見るが時間は過ぎていかない。
バケツで海水をくんで頭からかぶろうか、とにかく風さえ出てくれれば少しはマシになるのに・・・
しかし、着替えを持ってきていないのに海水をかぶれば、自宅に帰るまで潮でベタベタの体で帰らなければいけない・・・・
とか、考えて10分もしないうちに頭がフラフラとしてきた。
「もう、ダメ(,,゚ x 。)、バケツで水をくもう」と体を動かした時。
風向きが変わったのかそよそよと少しの風が。
ライフジャケットのファスナーを全開にして胸元に風を入れる。
普通の状態ならばおそらく熱風に近い温度のはずの風ですが、ほてった体には涼しく感じられます。
そしてその風は止むこともなく体を冷やしてくれました。
「助かった......」
それから船が迎えに来るまでの約1時間はすっかり体力を消耗しきってしまったので、竿を納めて磯の上でへたって座り込んでいました。
船が港に到着したらすぐに真水を頭からかぶり、自動販売機へ直行したことは言うまでもありません。
例会後の夕食で、他のメンバーに聞いてみると、私たちがいた磯の向きで釣りをしていたメンバーは半数が暑さで参っていました。
他の場所では風があって熱さは苦にはならなかったとのことですが、汗で防虫スプレーがすっかり流れ落ちてしまって蚊の猛攻に参ってしまったとのこと。
一人のメンバーは10数カ所刺されて腕が膨れあがり、中には耳たぶまで腫らしているメンバーがいました。
夏の日本海はもう嫌だ!という声が殆どでした。