1.何のために付けるの?
まず最初にウキは何のために付けるのかということを考えてみたい。
本来のウキの使用目的は「魚が針に付いたエサを口にくわえて引っ張ったときに、水上の釣り人が感知できる」、つまり目印という目的で付けられている。
また、魚がエサを捕食する水深=タナをキープして仕掛けがそれ以上沈んでいかないように保持すると言う目的も兼ね合わせている。
しかし、単に目印という目的ならばライン上に目立つ色の糸でもくくりつけておけば良いということになってしまう。
また、仕掛けがタナを保持するだけならば木の棒でも付けておけば済むではないかという疑問にぶつかってしまう。
なぜウキがこんなにバラエティに富んだ種類の物が販売されているのであろうか。
釣りが日本の社会に趣味として浸透してから長い歴史の間に、日本沿岸の魚の数が激減してきたからである。
釣りに詳しい諸氏ならばおわかりとは思うがあえて書かせていただく。
書物で読んだのだが、釣りサンデー社
(現在は廃業)の故小西会長達釣りの草分け的存在の方々が若かりし頃の海は、磯の近くで良型の魚が豊富に住み着いていた時代であったらしい。
紀伊半島や四国、九州といった各地の磯を開拓していき今日の磯釣りを導いてくださった諸先輩方には敬意を表したい。
しかしながら、開拓された釣り場がその後どうなったかというと、船舶の性能の向上と釣りブームによる釣り人口の増加が魚の乱獲につながった。
更にオキアミという抜群の集魚性を持つ撒き餌が乱獲に拍車をかけ、それとは逆にエサ取りと呼ばれる小型魚の育成を手助けしてしまったのである。
良型の魚たちは少なくなり人間の影におびえて陸から遠く深く離れてしまい、その代わり大量のエサ取り達が磯際に住み着いてしまった。
特に老成魚と呼ばれる大物ほど少なくなってきてしまった。
現在の磯釣りの技法は、いかにこのエサ取り達をかわして良型の魚たちの目の前にエサを運ぶかと言ってしまっても過言ではなかろう。
数少ない良型魚の居場所を探す目的のため、一人の釣り人が磯の一点から狙える範囲(射程距離?)を拡大せざるをえなくなった。
ウキという道具は釣りの仕掛けを魚が捕食する場所へ仕掛けを運ぶため,
潮に乗せて流す,遠投してポイントに投入する,という目的のための道具として一翼を担うことになったのである。
この釣り方は「
フカセ釣り」として一分野を築き上げていくことになった。
「フカセ釣り」に関しては次項で更に詳しく解説してみたい。
磯で使用されているウキは大別して道糸がウキの中心を通る「
中通しウキ」とウキの下部に小さな輪を持つ「
サルカンウキ」とに区別される。
それぞれに一長一短の特性を持っているが特性はほぼ同じと言えるだろう。
*但し、本流という条件の中では大きく異なるらしい。
ではなぜ現在磯で使用されるウキがドングリの形状をした球形に近い物が一般的なのであろうか。
磯はご存知の通り外洋に面しており波の上下の幅が大きく、湾内などで用いられる棒ウキでは海面上で不安定なため波や風の影響を比較的受けにくい形状が採用された。
注:棒ウキのこの不安定さを解消し、棒ウキの特性を生かした物にカヤウキが有る。
以前のグレ日本記録保持者、故本田収氏は潮岬でカヤウキを使った本流釣りを得意とした。

大きな波の上下動では棒ウキは図のようになってしまい、魚のアタリなどわかりにくい 更に、仕掛けを潮の流れに乗せるという行動を補助するためのアイテムとしてもウキを利用したからである。
スリムな棒ウキよりも球状に近いウキの方がより多くの潮流をボディに受け止めるのは理解していただけると思う。

直径が大きくなればなるほど潮流の影響を受けやすくなり安定して流すことができるのである。
左がドングリウキ、右が棒ウキ
直径を大きくすればするほど潮流をより多く受け止める
これらのように、磯という環境の中で使用するアイテムとしてドングリ型のウキが発展してきたのである。
この項の説明では細かい点でまだまだ疑問を抱く諸氏も多かろう。
それらは追々説明していくつもりなのでご了承願いたい。